【ネタバレ有】HOMESTAY、真とシロの関係性を考えた

 

 

 みなさん、こんにちは 大好きな長尾謙杜くん主演の映画『HOMESTAY』がAmazon Prime Videoにて2月11日、全世界同時配信されました。配信前のわたしはヤイヤイピーピー泣きよって、たくさんの友人にご迷惑とご心配をおかけしましたが、無事見ることができて、今はなんとか生きています。

 

 すごく素敵な作品でした。皆が少しずつ辛くて苦しくて、それでも少しずつ向き合って乗り越えていく、優しくて温かい作品に出会えたこと、そんな素敵な作品の主演を謙杜くんが務めたこと、本当に誇りに思います。

 

 偏差値3のわたしは、集中しないと「謙杜くんかっこいい~!!」しか言えなくなるのですが、わたしなりに気になったことというか、この作品においてじっくり考えたいことがあったので、文章にして整理したいと思いました。わたし自身が大学時代に文学を学んでいた経験から、文学作品や映像作品などの解釈は読み手側に委ねられているものであって、その解釈に正解はないと思っています。あくまで今回のブログも、わたし個人の意見です。正解を求めようと思って考えているのではなくて、この作品で読み取ったことをわたしなりに形にしておきたいと思ったので、そこのところはご理解いただければと思います。

 

 それではここから先はネタバレ含みますので、まだHOMESTAYを見ていない方やネタバレを踏みたくない方、そもそもわたしの意見なんて知らね~よって方はそっとブラウザを閉じてください。

 

 

 わたしがHOMESTAYの中で気になったのは、「真とシロの関係性」です。作品の最後で「俺が俺を殺した」「俺が真だ」と気づき、「真=シロ」であったことが分かります。わたしはこの「俺が俺を殺した」が「シロが真を殺した」のか、「真がシロを殺した」のか、どちらの意味なのだろうかと疑問に思いました。

 本筋通りなら、「シロが真を殺した」が正しいでしょう、なぜなら、シロは生前罪を犯し、それをリベンジするチャンスとして真の体にホームステイしている訳であって、罪を犯す=真を殺すと結びつきます。

 

 しかし、わたしには「真がシロを殺した」という意味も含まれているんじゃないかなと思いました。そう思った理由を述べていきたいと思います。

 

 一度死んだ真の体ににシロがホームステイをし始めて、真は晶や美月先輩からも言われた通り、今までの真とは変わった姿になります。簡単に言えば明るくなったのでしょう。「真=シロ」である以上、シロは元々は真であったのにも関わらず、自殺前の真は明るい真ではなかったということは、シロは真の中に元々あった【陽】の部分だと考えました。

 【昔の真】はアルバムの中に残っている幸せで楽しそうな姿であり、この頃の真は【陽のシロ】も違和感なく真として包括して生活することができていた姿です。それが、父親からの美大進学反対、母親の不倫、美月先輩の裏切り、学校でのいじめのような辛くて苦しいことが少しずつ溜まっていき、【昔の真】から【陽のシロ】と【陰の真】に分裂していってしまった。そしてついに、【陰の真】が【陽のシロ】を完全に飲み込み、【陽のシロ】が消滅してしまった時に、自殺をしてしまったのだと考えました。

 

 【陰の真】【陽のシロ】という2つの視点を以て作品を見てみると分かりやすく面白いなと思います。ホームステイ開始直後~物語中盤くらいまでは、【陰の真】は体だけであり、【陽のシロ】の存在が大きい。真とシロは全く別の存在でした。

 しかし、シロが真の置かれた環境で生活していくうちに、【陽のシロ】と【陰の真】が融合しはじめる。シロと真の一番最初の大きな融合は、満の部屋で真の遺書を見つけてしまった時です。もしも、「真≠シロ」であれば、シロはここまで落ち込んだり怒ったりすることはないのではないか。全く別物だと思っていた真とシロが実は「=」だったと気づき始めるヒントだと思います。眠っていた【陰の真】の影が大きくなり、晶や母親に当たってしまうという行為は、【陰の真】が抱えていた闇の感情を、【陽のシロ】が代弁した行為だと思っています。おそらく、【陰の真】だけでは、何かの感情を叫ぶことはできないでしょうし、そこは【陽のシロ】が中にいたからこそ、真は想いをぶつけることができたのでしょう。

 全く別の存在だった真とシロが再び融合し、共鳴していると考えられる描写が、「絵を破る」という行為です。美月先輩をモデルに書いた絵を本人に否定されて、真もシロもその絵を破るという行為を選んだことは、真とシロが元々は同じ一つの存在であることを意味する描写の一つだと思います。

 また、【陰の真】が【陽のシロ】を飲み込んでしまうのではないか。同じことを繰り返してしまうのではないか。暗雲立ち込めるフェーズに突入しますが、母の病室前で兄・満が放った言葉でシロは気づくのです。「真は愛されているんだ」と。

 満の言葉、母が身を挺して自分を守ってくれたこと、父からの筆のプレゼント。そして、遺書には登場しない晶は、気づかれない存在なんかではなくて、ずっとそばにいて「真は真だ」と気づいてくれていた存在だったこと。真の図案が失くなって、実行委員が皆で探しているシーンも、真の存在を求めている人がたくさんいることを意味しているとも思います。

 

 そして、晶に図案を渡して、その絵がかつて真が書いた絵と同じ絵だった時、シロは気づいたのでしょう。「俺が真だ」と。【昔の真】が【陰の真】と【陽のシロ】に分裂しても、真は真だった。ここで、真とシロが完全にひとつの存在に戻りました。とはいえ、分裂前の【昔の真】と、融合後の【新しい真】はまたすこし異なる存在だとは思いますが、真(シロ)の魂が在るべき場所(真)に帰ることができたのです。

 

 文字だけでは真とシロの関係性がうまく伝わらないと思ったので、超即席フロー図を貼ります。

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①昔の真はアルバムの中に残っている幸せで楽しそうな真の姿

②それが少しずつ辛いことが積み重なって、【陰の真】と【陽のシロ】に分裂

③【陰の真】の存在が大きくなり、【陽のシロ】の存在を侵食

※②~③における、【陰の真】と【陽のシロ】は真の中に共存する2つの存在として位置する

④【陰の真】が【陽のシロ】を完全に飲み込み、【陽のシロ】は消滅

⑤【陰の真】が残った時、真は自殺を選んでしまう

⑥シロのホームステイにより、再び共存スタート。ただし、ここでは【陰の真】はあくまで体の提供、【陽のシロ】が意志の主体であり、真とシロは別の存在として位置

⑦真の体で生活しているシロ(=真)が融合し始める

⑧シロは真だと気付き、【陰の真】と【陽のシロ】を包括した【新しい真】へ

 

 

 【陰の真】と【陽のシロ】の関係性の変遷をふまえた上で、もう一度「俺が俺を殺した」に議題を戻したいと思います。真が自殺を選んでしまった理由、もちろん真の魂(=シロ)が自分は愛されていることに気付けずに死を選んでしまったことが理由ですが、【陽のシロ】を消滅させたのは誰か。それは【陰の真】なのではないか。

 100日間のホームステイ経て、真が真に戻ることができたのは、真の中に【陽のシロ】の存在があったからこそだった。もしも、自殺前の真が【陽のシロ】を切り離し見捨てていなければ、真は自殺することもなかったに違いない。

 

 「俺が俺を殺した」は、「シロが真を殺した」でもあるし、「真がシロを殺した」でもあるのでしょう。なんなら、【昔の真】から【陽のシロ】と【陰の真】を分裂させてしまった時点で、間違いだったのかもしれない。

 

 美月先輩が、屋上で凹んでいる時に、真が言った「赤だったり、青だったり、紫だったり。みんなそれぞれ持っているのは一色じゃない」「いろんな色が重なり合うから美月先輩なんだと思います。全部が本当の美月先輩なんです」は、シロが答えに到達したからこそ言える言葉だと思います。【昔の真】は【陽のシロ】と【陰の真】が共存することが受け入れられなくて、【陰の真】が【陽のシロ】を飲み込んでしまった。【陰の真】も【陽のシロ】も、どれも【本当の真】であることを気づけなかったことが、一番の大罪なのではないでしょうか。

 

 わたしだって、できれば責任を負わずにテキトーに仕事したい自分、一方で責任のある仕事を任されて成長したいと思う自分、家族の為にいい娘・しっかり者の長女でいたい自分、本当は甘えたい自分、アイドルの謙杜くんが大好きな自分、会社の後輩の謙杜くんと社内恋愛をしている人格の自分(?)、サークルの後輩の謙杜くんに振り回されている人格の自分(?)、謙杜くんの幼馴染JKの人格の自分(?)、ちょっと後半はおふざけが入りましたが、色んなわたしがいます。どんなわたしも本当のわたしであって(後半3つの虚妄は除く)、色んな気持ちでぐちゃぐちゃ、ゆらゆらしてしまう時があっても、わたしはわたしなんだ、と思いました。

 

 余談が挟まりましたが、「真がシロを殺した」とか「シロが真を殺した」とか、そのようなことではなくて、結局のところ、真の自殺は、色々な自分を受け入れられずに、無意識のうちに一色であろうとしてしまったが故に起きてしまったことだと思います。だからこそ、真の魂が「シロ」という名前なのは、何色にでも染まれる、という意味も込められているのかもしれません。そして、「真」という名前も、どんな自分も「嘘いつわりのない、本当の姿」の意味の「真」の意味が込められているのでしょう。

 

 

 HOMESTAYを見ながら、思ったこと感じたことをブワ~とメモに残して、それをつなぎ合わせて思っていることをつらつら綴ったら、自分でも結局何を言いたいのか、分からなくなってしまいました。たぶん、読んでくださっている方も何言ってるのか伝わらない文章になってしまったと思います。ごめんなさい。

 

 あくまで、これはわたしの考えであって、作者、脚本家、そして演者である謙杜くんが何を考えて作品を作っていたのかは分かりませんが、偏差値3のパンピであるわたしでさえ、ここまで深く考えてしまった「真とシロの関係性」を見事に演じきった謙杜くんって本当に本当にすごいのでは・・・自担が誇らしすぎて涙が出てきました。

 

 謙杜くんにとっても大切な作品になったでしょうし、わたしにとっても宝物になったHOMESTAY。まだ見ていない方はぜひ見てみてください。最後まで読んでくださり、ありがとうございました。